米国の裏切り                      寺岡 誠
北朝鮮へのテロ支援国家指定解除は米国のシナリオ通りで、当初から折り込み済みで、決定は今更の事では無く、対朝の重要協議では日本は常に蚊帳の外論、米露中韓朝で歩調を合わせ、日本が拉致問題で反対をしようがすまいが「悪の枢軸」とまで名指した、北朝鮮への指定解除は米国がタイミングを計っていただけだ。
 アフガニスタンやイラクを見ても解る様に、国連の反対を押し切って迄も、両国をテロ支援国家として米国が持ち得る原爆以外の全てを使用して国家その物を完全に破壊し乍も、同じテロ支援国家と指定した北朝鮮に対しては、銃弾の一発すら発する事も無く、世界の警察を自負する米国らしからぬ気長な対北協議に奔走する様は、明らかに前者のイラク・アフガニスタンとは別格扱いで有る。
 この明暗は、言葉では片付けられ無い米国の姑息で強かな裏事情、亜細亜戦略が見え隠れする。
米国が破壊攻撃をしたのはイスラム主義国家で有り、イスラエルと直接敵対していない中国やロシアが擁護する北朝鮮を攻撃する事は戦略的に得策では無いと米国の計算だ。
 テロ支援国家指定解除の手続きは、26日に提出された「核計画申告」に基づく方針だが、更に北朝鮮は実効性を示す形として27日、ソン・キム米国務省朝鮮部長等の立ち会いの元、寧辺「黒鉛減速炉」の空気冷却塔(原子炉の発電用タービンを回した後の水蒸気をパイプに通し、熱を冷却して水に戻す施設)を爆破すると公表。
 しかし内部は既に解体され使用不可能な状態に有り、象徴的建造物の解体と言うだけのデモンストレーションを世界に公開し、ブッシュ大統領へ退陣の土産として米朝間で既に決定されていたシナリオだ。
 又、以前からライス国務長官等の発言を分析すれば、中国仲介(立会人)の元、金正日体制の保証と敵視政策解除が確約されれば北朝鮮は核開発を放棄(核爆弾は温存)し、見返りに米国はテロ支援国家指定解除と経済復興支援をするとの交換条件で一致しており、日本の拉致問題はこの条件(闇取引)に含まれていない事が判る。
 米国が拉致問題に対し、関心や同情を示す様なこれ迄の姿勢は、あく迄も指定解除後の北朝鮮へ膨大な経済支援を確約する為には日本の協力は不可欠で有り、始めから利用目的のリップサービス・ポーズでしかない。
 福田康夫は相変わらずの忠犬振りで、直ぐにブッシュ(米国)へ服従し、北朝鮮のテロ国家指定解除へ向けて歩調を合わせる為、「万景峰号」の入港許可を軽々に打ち出した。
 名目は人的交流との戯言で、解除は経済制裁の一部だけだと猿知恵でほざき、拉致被害者と家族を完全に切り捨てた売国的「解除もやむなし」との町村官房長官の発言に繋がった。
 福田康夫は元々、拉致被害者の救出よりも外交関係の維持(外面優先)が政治姿勢・基本理念で有り、今回の北朝鮮問題では如実に顕れた。
 だがその動きへ敏感に反応した「拉致被害者の会」や大多数の国民から予想以上の反発を受け、高村外務大臣や町村官房長官等は、脳天気に「米国が正式にテロ支援国家の指定解除をするには期間が45日も有る。まだ正式に決まった訳では無い。」等と詭弁で国民を愚弄し、その場凌ぎで摺り抜け様としている。
 更に福田康夫を援護するが如く「拉致問題は忘れない。棚上げはしない。等と、ライス米国務長官が業々取材陣を招いて口先だけの寝言をほざき、この場に及んでもまだ日本国民を欺こうとしている。
 六ケ国協議とは名ばかりで、日本の「拉致問題」は始めから「切り捨て・棚上げ」が決まっていたブッシュ(米国)の描いたシナリオ(茶番劇)で有る。
 つまり、米国が指定を解除した時点で北朝鮮は日本と拉致問題を無理に話し合う必要性も無く、日本だけが経済制裁を解除しなくても、米中韓露が北朝鮮へ支援(資金・エネルギ・食料)に回る訳で、結局日本は六ケ国協議の枠内に入れて貰う為、妥協をする以外に選択肢は無くなる。
 米国の本音は拉致被害者救済や日本の国益よりも、朝鮮半島の非核化・開発放棄の栄誉を掴みたいだけだ。
結果、日本は今後「拉致問題」を進展・解決させる事は困難と成り、
更に六ケ国協議の呪縛(約定)に依り、日本一国の経済制裁解除
反対は通らず、指定解除と同時に北朝鮮への膨大な経済援助の
枠組み内へ米国の属国(米国の負担軽減の為)が如く、強制的させ
られる状況に追い込まれるだけで有る。
    6月27日「爆破される塔」
寧辺「黒鉛減速炉」の空気冷却塔(右写真)
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