「欺瞞の会談」                寺岡 誠
平成20年4月25日、世界中で批難と怒号を受けた中国五輪聖火リレー隊が日本に到着した。
 受入れた長野県は混乱を避ける為、翌日リレー隊を完全防護の厳戒体制で凌いだが、これで全ての問題が解決した訳では無い。
 発端は1950年に中国人民解放軍が独立国家「チベット」に武力進攻し、虐殺された人数と戦死者、強制収容所での死亡、餓死者の総数が120万人(当時のチベット推定人口は600万人)を数え、寺院11,500の内9割を破壊、15万人居た僧侶も迫害を受け1500人まで減少、更に占領以降、チベット内に一千万人の中国人を入植させてチベット民族の文化伝統を破壊するだけでは事足りず、今尚、民族浄化の如くチベット人への迫害を続けている事への怒りで有る。
 それ等の非道に対し抗議を示す為、本年三月十四日、丸腰のチベット人僧侶と国民がチベット自治区ラサに於いて「自由と人権」を求めて平和的徒歩行進を行った。
 だが中国政府は兵士を派遣してチベット人150名以上を虐殺、数百名の僧侶を拘束する等の武力鎮圧を行い、四月二十九日迄に起訴した僧侶等三十人に無期懲役等を下した。
 この様な非人道的行為に対し「平和の祭典で有るオリンピックを、中国には開催する資格が無い!」と世界中の良識者が怒り、チベット国民の救済支援に立ち上がった。
 我が国も「自由・人権」を法に掲げる民主主義国家ならば、チベット民族への迫害を看過せず、殺戮を繰り返す中国の「偽善的五輪」には、毅然として不参加の抗議姿勢を示すべきで有る。
 危機感を感じた中国は問題の鎮静化を謀る為、インドで亡命政府を樹立しているチベット仏教最高指導者ダライラマ十四世の代理人との対話を五月四日に非公式で行なう等、柔軟姿勢を演じた。
 だが、これは中国五輪の成功を目的とした一時凌ぎの世界を欺く為の姑息な策略で有る。
その最中、中国の胡錦濤が来日、五月七日に日中両政府の共同声明を発表したが、懸案の日本人殺害テロ中国製毒入りギョーザ事件」に付いては、被害の子供が二切れ、親が四切れを食べてた場合、致死量に相当する劇薬が検出されたとの公表にも関わらず、親中派の福田首相は胡錦濤が「パンダ2頭を提供する」との談話で歓喜、毒薬餃子事件は調査を継続するとの詭弁で不問にし、日本国民の感情と不安依りも外交関係を優先し、事件の早期解明と謝罪は要求し無かった。
 更に東シナ海に於けるガス田の盗掘問題でも、中国は今後も現状の盗掘(日本への主権侵害)をしながらも、解決に向けた共同開発等の協議だけは継続するとの戯言に終始。
 結局、日本政府は現状の盗掘を黙認し、口先だけの継続協議に解決の兆しが見えたと表賛した。
又、日本は「安全保証常任理事国入り」への理解と支持を明文する様に求めたが、中国側が地球温暖化政策や洞爺湖サミット等の議題を優先し、今後国連での活躍を見守るとの軽視文章に止めた。
 安保理とは平和と安全保障を協議する国連機関として発足来六十三年が経過し乍も、第二次世界大戦の戦勝国のみが議決権を行使出来る「常任理事」を独占し、改革も無く閉鎖的な機関で有る。
 冷戦構造が崩壊し、混沌とした情勢下、今や安保理とは名ばかりで、北朝鮮やイラン等の無謀な核保有・拡散を阻止出来ない状況を見ても明らかな通り、正常に機能しているとは言い難い。
 中国が日本の常任理事国入りを拒否する理由、米太平洋軍のキーティング司令官(海軍大将)が本年3月11日、上院軍事委員会の公聴会で証言した内容に答えが有る。                  指令官は「昨年、中国を訪問した際、中国海軍幹部が太平洋を東西に分け、米中両勢力圏に分割、ハワイから東の海は米国が西側の太平洋海域は中国が取ると言うのはどうか。両国が情報を交換し、米国はハワイから西方に海軍力を送り込む手間が省ける。」との提案をして来たと証言。
 更に「中国が勢力圏拡大を目指しているのは明らかだ。」と強調、警戒感を表わにした。
つまり、中国の軍部指導者は日本近海、周辺国(朝鮮半島・台湾)等を軍事支配下に置く事を念頭に、戦略的構想(覇権主義)を剥き出した発言で、その構図を目指すには日本の常任理事国入りは障害と成るからで有る ※今回の会談は中国が利するだけで、日本はパンダで全てを許した。

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